とはいえ、いざ目の前で発作が始まると、慣れていても一瞬ヒヤッとするものですよね。「まず何を見ればいいんだっけ」「これは救急車を呼ぶ発作なのか」——夜勤帯で一人のときは、なおさら頭が真っ白になりがちです。
この記事では、現場3年目の准看護師が、発作中に看護師がまず観察すること・やってはいけないこと・発作がおさまった後の記録・受診や救急要請の判断目安・日頃の備えを、入所施設のリアルな手順に沿って整理します。これから施設看護に入る方の、最初の地図になればうれしいです。
発作が始まったら、まず「時計」と「全身」を見る
発作対応でいちばん大事なのは、慌てて駆け寄って体を押さえることではありません。発作が始まった時刻を確認することです。なぜなら、その後の「救急要請するかどうか」の判断は、発作がどれくらい続いたか=持続時間で大きく変わるからです。腕時計でも壁の時計でもいいので、まず時刻を頭に入れます。
そのうえで、利用者さんの全身を観察します。あとから「どんな発作だったか」を主治医や受診先に伝えるとき、看護師の観察記録がそのまま判断材料になります。記憶に頼らず、見たことを言葉にしながら確認していくのがコツですね。
発作中に観察したい主なポイント
✅ けいれんの型:全身がガクガクするのか、体の一部だけか、体がこわばって固まるのか
✅ 左右差:手足や顔の動き・目線が左右どちらかに偏っていないか
✅ 顔色・唇の色:青白さやチアノーゼ(唇・爪が紫色になる)が出ていないか
✅ 意識:呼びかけへの反応、目が開いているか、視線が合うか
✅ 呼吸の様子と、嘔吐・失禁・口からの泡の有無
✅ けがにつながりそうな周囲の状況(転倒・ぶつけた場所)
すべてを完璧に覚えようとしなくて大丈夫です。「時刻・けいれんの型・顔色・意識」の4つだけでも押さえておくと、あとの報告がぐっと楽になります。
発作中にやること・やってはいけないこと
発作そのものを、外から力ずくで止めることはできません。看護師ができるのは、発作が落ち着くまで安全を確保して見守ることです。具体的には次のような対応になります。
やること
周囲にぶつかりそうな机や椅子を遠ざけ、頭の下にクッションやたたんだ衣類を入れて、頭を守ります。眼鏡をかけていれば外します。可能であれば、嘔吐物などで喉が詰まらないよう、けいれんが落ち着いたタイミングで体を横向き(回復体位)にします。きつい襟元はゆるめて、呼吸が妨げられないようにします。そして、ひとりにしないこと。応援を呼べる状況なら、迷わず人を集めます。
やってはいけないこと
❌ けいれんしている手足を強く押さえつける……関節や筋肉を痛める原因になります。動きを止めるのではなく、周囲の危険を取り除く発想で。
❌ 無理に揺さぶって起こそうとする・水を飲ませる……意識がはっきりしないうちの飲水は誤嚥のもとです。
発作がおさまった後にやること
けいれんが落ち着いても、すぐにいつもの様子に戻るとは限りません。発作の後はぼんやりしたり、眠り込んだり、もうろうとした状態が続くことがあります。この間も呼吸や顔色を見ながら、回復体位でそばに付き添い、意識がはっきり戻るまで見守ります。けがの有無、口の中を切っていないかも確認します。
そして看護師として欠かせないのが記録です。観察した内容を、時系列で残します。これが主治医への報告、次回受診時の情報、そして施設内での申し送りの土台になります。
記録で特に価値が高いのは「いつもの発作と同じだったか、違ったか」という視点です。ふだんから一人ひとりの発作のパターン(型・持続時間・頻度・前ぶれ)を把握しておくと、「今回はいつもより長かった」「左右差が初めて出た」といった変化に気づけます。変化こそが、受診や薬の見直しのきっかけになる一次情報です。
受診・救急要請の判断目安
「救急車を呼ぶべきか」は、施設看護師がいちばん悩むところですよね。最終的な判断は施設のマニュアルと主治医の方針に従うのが大前提ですが、一般に救急要請を考える目安として、次のような状況が知られています。
🚑 発作が続けて起こり、その合間に意識が戻らない
🚑 顔色が悪く呼吸の状態が戻らない・チアノーゼが続く
🚑 転倒などで頭を強く打った・大きなけがをした疑いがある
🚑 初めての発作、または明らかにいつもと違う様子
🚑 水中や入浴中など、危険な状況で発作が起きた
逆に、いつもどおりの発作で短時間でおさまり、その後しっかり回復していく場合は、施設の取り決めに沿って経過観察と主治医への報告で対応することも多いです。大切なのは、一人で抱え込まず、迷ったら早めに相談・要請に動くこと。「呼びすぎたかな」より「様子を見すぎた」のほうが、現場ではリスクが大きいと感じています。
日頃の備えが、いざというときの差になる
発作対応の質は、発作が起きる前の準備でほぼ決まります。施設の看護師として、ふだんからやっておきたいのは次のようなことです。利用者さん一人ひとりの発作の型・頻度・前ぶれ・主治医の指示を一覧にまとめておく。発作時の対応手順と救急要請の基準を、支援員さんとも共有しておく。服薬の管理状況を把握しておく。これらが整っていると、夜勤帯で看護師が一人でも、支援員さんと連携して落ち着いて動けます。
医療職と福祉職がチームで動く施設だからこそ、「発作が起きたら誰が何をするか」を看護師が言語化して共有しておく価値は大きいです。マニュアルは作って終わりではなく、ヒヤッとした場面のたびに見直していくものだと思っています。
✅ 発作が始まったら、まず時刻の確認。持続時間がその後の判断を左右する
✅ 観察は「時刻・けいれんの型・顔色・意識」の4つを最優先に
✅ 口に物を入れる・強く押さえるのはNG。周囲の危険を取り除いて見守る
✅ 発作後はもうろう状態に付き添い、時系列で記録を残す
✅ 救急要請の目安は「5分以上・繰り返す・呼吸が戻らない・頭を打った・初発・いつもと違う」。最終判断は施設マニュアルと主治医の方針に従う
✅ 日頃の一覧化と支援員との共有が、いざというときの落ち着きを生む
てんかん発作の対応は、知識と日頃の備えがあれば、必ず落ち着いて動けるようになります。この記事が、同じ施設で奮闘する看護師さんや支援員さんの、ひとつの安心材料になればうれしいです。



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