施設看護師と支援員の連携がうまくいかない理由|「伝わらない」の正体と3つの対処法

准看護師のキャリア
「看護師さん、この利用者さん今日入浴していいですか?」——支援員さんからこう聞かれて、「熱もないし血圧も問題ないので大丈夫ですよ」と答える。医療的には正しい返事のはずなのに、なぜか「……なんで大丈夫なんですか?」という顔をされる。

障害者支援施設で働く現場3年目の准看護師ですが、この「医療的には正しいのに、支援員さんに伝わらない」という場面に何度も直面してきました。これは看護師側の説明不足なのか、支援員側の理解不足なのか——どちらでもない、と今は思っています。医療職と福祉職は、そもそも「ものの見方の軸」が違うんです。

この記事では、①看護師と支援員の連携がうまくいかない本当の理由 ②「伝わらない」が起きやすい場面 ③私が実践している3つの対処法、を現場目線で書きます。同じモヤモヤを抱えている施設看護師さん・支援員さんに届けば嬉しいです。

連携がうまくいかない理由——「見ている軸」がそもそも違う

看護師は医療の世界で育ちます。バイタル・病態・治療方針——数値や根拠をもとに判断する文化です。「体温・血圧・SpO2に問題なし、よって入浴可」という思考回路が染みついています。

一方、支援員さんは福祉の世界で育ちます。「この利用者さん、いつもと様子が違う」「表情が暗い」「さっき食欲がなかった」——数値より、その人の「らしさ」の変化を見るプロです。

📊 医療職と福祉職、見ているものの違い
🩺 看護師が見ているもの:バイタル・病態・治療方針・医学的根拠
🤝 支援員が見ているもの:利用者の「いつもとの違い」・行動特性・生活リズム
→ どちらが正しいではなく、どちらも正しい。軸が違うだけ。

この「軸の違い」を理解していないと、お互いに「なんでわかってくれないんだろう」と消耗し続けることになります。連携の問題は能力の問題ではなく、文化の違いの問題なんです。

「伝わらない」が起きやすい2つの場面

① 日常ケアの判断場面

入浴の可否、活動の制限、食事形態の変更——これらは医療的判断と、利用者さんの生活・障害特性の両方が絡む場面です。「医学的にはOK」でも、支援員さんからすると「でもこの方、今日は落ち着かなくてパニックになりそうで……」という懸念がある。逆に「医学的には安静が必要」でも、「この方、動けないとかえって不安定になるんです」という事情がある。

障害特性に関する知識は、支援員さんのほうが圧倒的に深い。ここは素直に認めるべき部分だと思っています。

② 「なんでそうするの?」と聞かれる場面

「なんでこの薬を飲ませるんですか?」「なんでこのタイミングで処置するんですか?」と聞かれることがあります。答えはわかっている。でも「医学用語を使わずに、生活支援の言葉で説明する」のが難しい。「血圧が高いので降圧剤を服用しています」は正確ですが、支援員さんが本当に知りたいのは「じゃあ今日の活動でどこに気をつければいいか」だったりします。

私が実践している3つの対処法

①「なぜ」より「どうすればいい」を先に伝える

支援員さんが知りたいのは医学的な根拠より「自分は何をすればいいか」です。「血圧が高めなので、今日の入浴は短めにして、上がったらすぐ声をかけてください」——理由より先にアクションを伝えると、動きやすくなります。理由は聞かれてから補足する形でいい。

この「見るポイントを具体的に絞って伝える」やり方は、皮膚トラブルの観察でも同じです。「異常があったら教えて」ではなく「赤み・ポツポツ・掻き傷・じゅくじゅくのどれかがあったら教えてください」と伝える。何を報告すればいいかが明確なほど、報告は確実に増えます。

② 支援員さんの「いつもと違う」を信じる

「バイタルは正常だけど、なんか今日おかしいんです」という支援員さんの感覚は、バカにできません。毎日利用者さんと接している人の直感は、数値に表れない変化を捉えていることがあります。「数値は問題ない」と切り捨てず、「何がいつもと違う?」と掘り下げることで、体調変化を早期に拾えた経験が私にもあります。

③ 役割を分けすぎず、現場を一緒に動く

「私は医療担当、あなたは生活担当」と役割を分けすぎると、連携はかえって薄くなります。看護師も利用者さんの生活を知る努力をする。入浴支援に一緒に入ったり、食事介助の場面に顔を出したり。そうするうちに「看護師も現場を知っている人」として見てもらえるようになりました。信頼関係は会議ではなく、業務の中で積み重なるものだと思っています。

施設看護師は「医療と福祉の翻訳者」

最近、施設看護師の役割は「医療と福祉の翻訳者」だと思うようになりました。医師・病院側の言葉を支援員さんにわかりやすく伝える。支援員さんが感じている利用者さんの変化を、医療側に正確に伝える。その橋渡しができるのは、両方の世界に足を置いている施設看護師だけです。

💡考察
「伝わらない」とイライラするより、「どう言えば伝わるか」を考えるほうが建設的——そう気づいてから、だいぶ楽になりました。完璧に伝わらなくてもいい。少しずつ積み重ねていくしかないし、それでいいと思っています。
📝 まとめポイント

✅ 看護師と支援員の連携問題は、能力ではなく「見ている軸=文化」の違いから生まれる
✅ 支援員には「なぜ」より「何をすればいいか」を先に、具体的に絞って伝える
✅ 支援員の「いつもと違う」という感覚は、数値より早く変化を捉えることがある
✅ 役割を分けすぎず、現場を一緒に動くことで信頼関係が積み重なる
✅ 施設看護師は医療と福祉の「翻訳者」。橋渡しこそが専門性

同じ悩みを抱えている施設看護師の方、支援員の方。「うちはこうしてる」という話があれば、ぜひお問い合わせから聞かせてください。現場同士の知恵の共有が、この仕事をもう少し楽にしてくれるはずです。

※ 本記事は障害者支援施設で働く現場看護師の一次情報・体験に基づく内容です。記事中の事例は特定を避けるため一部抽象化しています。

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