うちの施設でも今年の3月中頃に事務長から話が降りてきました。2月頃には施設内でそういう話が出ていたのですが、現場の看護師に具体的な話が来たのは3月に入ってから。準備期間はほぼ2週間ほどで、正直「いきなりだな」と感じました。
嘱託医の検診自体は一人あたり5分もかかりません。でも、その「5分」のために看護師がやるべきことは意外と多くて、事前の名簿作成・関係機関への連絡・職員への周知・当日の人員調整まで含めると相当な段取りが必要です。
この記事では、施設入所支援と生活介護を併設する障害者支援施設(入所利用者約30名)で実際に医師配置加算の検診を担当している私が、準備から当日の動きまでをリアルに書き残します。今年度まだ2回目で手探りの部分もありますが、同じ立場の施設看護師さんの参考になれば嬉しいです。
医師配置加算とは?制度の基本と法的根拠
医師配置加算とは、障害者支援施設などにおいて医師を配置した場合に算定できる加算です。常勤の医師を配置するのが難しい施設がほとんどですが、嘱託医という形で外部の医師と契約し、定期的に来訪してもらうことで算定することができます。
法的根拠は以下の2つです。
・人員配置基準:平成18年厚生労働省令第172号(指定障害者支援施設の人員・設備・運営基準)第4条
・報酬加算基準:平成18年厚生労働省告示第523号(指定障害福祉サービス等の費用算定基準)別表
※令和6年度の報酬改定では医師配置加算の基本要件に変更はありません。
算定の最低条件は「月1回の来訪」
最も重要なのが「毎月1回以上、嘱託医が来訪すること」という要件です。1回でも抜けると、その月の加算が取れなくなります。
「減算になる」と聞いていましたが、正確には「加算が算定できなくなる(加算の不算定)」という扱いです。ただし施設の収入に直結する話であることに変わりはないので、月1回を確実に確保することが最優先になります。
「出勤簿に印をもらう」の意味
嘱託医が来訪した際、施設の出勤簿に記録をつけてもらうのが一般的です。これは法令に明記されているわけではなく、「加算を算定した証拠」として施設が自主的に運用しているものです。
介護・福祉の報酬算定は行政の実地指導(監査)の対象になります。「きちんと月1回来てもらっていた」という記録がなければ、不正請求とみなされ返還を求められるリスクがあります。出勤簿への記録はそのための証拠として機能するわけです。
うちの施設での開始の経緯——正直「いきなり」でした
2月頃に施設内でそういう話が出ていたのは知っていました。でも「なんとなく検討している」という段階だったので、まさか翌月から動き始めるとは思っていませんでした。
3月の中頃に事務長から話が来て、「4月から算定していきます」という流れになりました。現場の看護師としては、嘱託医の先生との連絡体制・検診当日の段取り・職員への説明を短期間で整える必要がありました。
「そんな急に言われても……」というのが正直なところでしたが、他の施設でも似たような経緯で始まるケースは多いのではないかと思います。
検診前の準備:やることリスト
① 受診予定者名簿を病院にFAXする
検診の数日前までに、受診する利用者の名簿を嘱託医の先生(または先生の勤務先病院)にFAXします。先生側で事前に対象者を把握しておくことで、当日の検診がスムーズになります。
うちでは入所利用者約30名が対象なので、氏名・生年月日・主な既往症をリスト化してFAXしています。
② 入浴時間の変更と職員への周知
うちの施設では通常、午後の時間帯に入浴支援が入っています。今日は午後から嘱託医の先生が検診に来る予定だったため、入浴を午前中にシフトしました。
この変更を現場の支援員(生活支援員)に周知するのも看護師の仕事です。先週から関係職員に連絡を入れ、当日の動きについて打ち合わせをしました。「なぜ変更するのか」「当日の流れはどうなるのか」を丁寧に説明することで、当日の混乱を防ぐことができます。
③ 人員調整——当日のサプライズにも備える
今日は朝から男性の正規職員がいないという状況でした。入浴支援は利用者のプライバシーと安全管理の観点から同性介助が基本です。臨時職員だけで男性利用者の入浴支援にあたらせるわけにはいかないため、私(男性准看護師)も入浴支援に入ることになりました。
「看護師なのに入浴介助?」と思われるかもしれませんが、小規模な障害者支援施設ではこういった「多役」は珍しくありません。むしろ利用者の日常の様子を直接観察できる機会でもあります。
当日の流れ:入浴・バイタル・検診が同時進行
今日の午前中はこんな流れで動きました。
✅ 入浴支援(通常の午後から変更)
✅ 入浴の合間にバイタル測定(血圧・体温・酸素飽和度 を全利用者分)
✅ バイタルで気になる数値があれば先生への報告用にメモ
【午後の動き】
✅ 嘱託医の先生来訪・出勤簿へ記録
✅ 検診(聴診・問診・触診)+看護師からの情報提供
✅ 気になる利用者については個別に相談
入浴の合間にバイタルを測るというのが地味に大変で、「この部屋の入浴が終わった→次の方が入る前にバイタル→また入浴介助→バイタル……」の繰り返しです。バイタル測定自体は1人2〜3分で終わりますが、入浴の流れに合わせて動く必要があるので段取りが重要です。
嘱託医の検診内容と看護師の役割
検診の内容は聴診・問診・触診が中心で、一人あたり5分もかかりません。でも、この短い時間を利用者の健康管理に活かすために、看護師側の準備が非常に重要だと感じています。
私が意識しているのは以下の点です。
- 事前に「最近気になっていること」をまとめておく(食欲の変化・排便の状況・睡眠の様子など)
- 既往症や現在の服薬情報を手元に置いておく
- 午前中に測定したバイタルで気になる数値があれば報告する
- 先生の見立てや指示内容を必ずメモに残す
特に障害者支援施設の利用者は、自分の体調を言葉で伝えることが難しい方も多いです。看護師が「代弁者」として先生との橋渡しをする場面がとても多く、この役割の大切さを検診を重ねるごとに実感しています。
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まとめ:まだ2回目、一緒に手探りしましょう
✅ 医師配置加算は月1回の嘱託医来訪が最低条件(未達=その月の加算が取れない)
✅ 出勤簿への記録は算定の証拠として必須(監査対策)
✅ 法的根拠:厚生労働省令第172号・告示第523号
✅ 当日は入浴・バイタル測定・検診が同時進行——事前の段取りが9割
✅ 看護師は嘱託医との情報共有の橋渡し役として機能
✅ 施設によってはいきなり導入が決まることも——早めの準備体制構築を
「完璧な運用」を最初から目指す必要はないと思っています。大事なのは月1回を確実に積み重ねること、そして毎回の検診を利用者の健康管理に少しずつ活かしていくことではないでしょうか。
同じ立場で担当されている看護師の方、ぜひコメントやお問い合わせで情報交換しましょう。現場ならではの知恵を共有していけたらと思います。
【追記】実際やってみて——当日の結果報告
検診が終わったので、実際どうだったかを追記します。
バイタル測定は「場所別」で動くのがポイント
ラウンジにいる利用者は順次声かけしてその場で測定できたのでスムーズでした。一方で自閉症の方は居室で過ごしている時間が長いため、居室まで出向いて対応。後期高齢者の方も居室訪問のついでに検診の説明をしておくと、午後の検診をスムーズに受け入れてもらいやすくなります。
「先生が怖い」「恥ずかしい」などそれぞれの反応があって、無理強いできない方については支援員と連携して対応しました。看護師一人で抱え込まず、支援員に任せる判断も大事だと改めて感じました。
入浴後の処置も並行して
入浴直後に処方薬の処置が必要な方(皮膚トラブル・白癬など)もいるため、入浴が終わり次第そちらの対応も挟みながら動きました。バイタル測定・入浴支援・処置が同時並行になるので、優先順位の判断が求められます。
予定通りにいかないのが施設看護の現実
今日一番の出来事は、左股関節置換術を受けた利用者の方が入浴後に突然の激しい痛みを訴えたことでした。手術から2年以上経過していましたが、入浴後から左大腿前面に強い痛みが出て車いす使用に。結果として午後の検診はキャンセルして、そのまま通院対応になりました。
嘱託医の先生の検診自体は特に大きな所見もなく無事に終了。でも「検診が無事に終わった」だけが今日のゴールではなく、利用者一人ひとりのその日の状態に向き合うことが、施設看護師の本当の仕事だと思っています。
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