私は元自衛官の男性准看護師で、障害者支援施設(施設入所支援+生活介護、入所約30名)で働いて3年目になります。実は病院勤務を経験しないまま、この世界に飛び込みました。その立場から結論を言うと、きつい部分は確かにあります。ただしそれは、世間でイメージされる「看護師のきつさ」とは、だいぶ種類が違うものでした。
この記事では、現場3年目の私が「本当にきついと感じる5つのこと」と「施設ならではの働きやすさ」、そして「きつさを軽くするためにやってきた工夫」を、実体験ベースで正直にお伝えします。施設看護を検討している看護師さん・准看護師さんの判断材料になれば嬉しいです。
結論:「きつい」は本当。ただし体力ではなく「判断の重さ」がきつい
先にお断りしておくと、私には病院勤務の経験がありません。准看護師の資格を取り、病院を経ずに施設へ入った人間です。なので「病院と比べてどうか」を語る資格はないのですが、実習で見た病棟の様子や、病院経験のある同業の知人から聞く話と照らす限り、夜勤・処置ラッシュといった体力的なきつさは、施設はかなり軽い部類のようです。実際、私の施設は看護師の夜勤がなく日勤のみで、生活リズムはとても安定しています。
その代わりにのしかかってくるのが、「判断を一人で背負う重さ」と「医療職が少数派である孤独感」です。施設では看護師が自分ひとり、という時間帯が普通にあります。相談できる医師も先輩看護師もそばにいない中で判断を求められる——このきつさを知らずに入職すると、ギャップに苦しむことになるでしょう。
ちなみに「病院経験がないと施設看護師は務まらないのでは?」と聞かれたら、私は「工夫次第でやれる」と答えます。実際に3年続いています。では、具体的に何がきついのか。5つに絞って挙げていきます。
障害者施設の看護師が本当にきついと感じる5つのこと
①医療判断をほぼ一人で背負う
これが一番きついです。施設に医師は常駐していません。利用者さんの発熱、転倒、いつもと違う様子——「受診させるか、様子を見るか」の一次判断は、ほぼ看護師に委ねられます。
病院であれば「先生に報告して指示をもらう」で済むはずの場面が、施設では「自分の判断で受診を決め、家族と連絡を取り、通院に付き添う」ところまで一人で組み立てることになります。判断を間違えたら、と考えると、正直今でもプレッシャーはあります。
ただ、この「一人で判断する経験」は確実に力になります。3年目の今は、バイタルと普段との違いを根拠に「なぜ受診が必要か」を自分の言葉で説明できるようになりました。病院を経験していない私でも、現場で判断を重ねる中で身についた自信です。
②言葉がうまく通じない・症状を訴えてもらえない
知的障害のある利用者さんの多くは、「痛い」「気持ち悪い」を言葉で伝えることが難しいです。つまり、問診が成立しない前提でアセスメントをすることになります。
食事量、表情、歩き方、夜間の様子——支援員さんからの情報も総動員して「いつもと違う」を拾う。実習で経験した「患者さんに聞けば答えてもらえる」問診とはまったくの別物で、この観察力は相当なレベルで要求されます。慣れるまでは「見逃していないか」という不安が常につきまといました。
③医療職と福祉職の「わかり合えなさ」
施設の主役は支援員さん、つまり福祉職です。医療職の「リスクを先に潰したい」感覚と、福祉職の「本人の生活と意思を尊重したい」感覚は、しばしばぶつかります。
「なんで伝わらないんだろう」と一人で抱え込んだ時期が、私にもありました。このテーマは別記事(医療職と福祉職、わかり合えない?)で詳しく書いていますが、職種間の翻訳作業は施設看護師の隠れた主要業務だと思っています。
④段取り業務が想像以上に膨大
健康診断の準備、通院スケジュールの調整、薬の管理、家族への連絡——30名の利用者さんの医療まわりの段取りが、すべて看護師に集まってきます。午前も午後も通院付き添いで埋まる日も珍しくありません。
「施設看護師はのんびりしている」というイメージで来ると、この事務量・調整量に驚くはずです。処置は少ないのに、なぜか一日中走り回っている。それが実態です。
⑤医療スキルが身につきにくい・伸ばしにくい不安
採血や点滴、急変対応の頻度は、病院に比べて圧倒的に少ないと言われますし、実際うちの施設でも多くはありません。病院経験のない私にとっては「このまま医療技術を経験しないままでいいのか」という不安がありましたし、病院から転職してきた人なら「スキルが落ちる」不安になるはずです。
一方で、てんかん発作への対応(障害者施設でてんかん発作が起きたら?)や褥瘡ケアの仕組みづくりなど、施設だからこそ深められる領域もあります。「何のスキルを伸ばすか」を自分で選び直す必要がある、というのが正確なところでしょう。
逆に「施設ならでは」と感じる働きやすさ3つ
私の施設は看護師の夜勤なし。生活リズムが安定し、体調管理が格段にしやすいです。夜勤で消耗して転職を考える看護師さんには、これだけで大きな魅力だと思います。
②時間に追われる感覚が少ない
実習で見た病棟の、ナースコールに走り処置に追われる切迫感はありません。利用者さん一人ひとりとゆっくり関わる時間が持てます。
③長い付き合いの中で看護ができる
入所施設は利用者さんとの関係が年単位。「その人の普段」を知った上での看護は、短い入院期間では難しい、施設ならではの面白さがあります。
きつさを軽くするために、現場3年目の私がやってきたこと
きつさは工夫で確実に軽くなります。私が実際にやってきたのは次の3つです。
1つ目は、判断の根拠を記録に残すこと。「受診を決めた理由」「様子見と判断した根拠」を書き残すようにしたら、一人判断のプレッシャーがかなり減りました。あとから振り返れる形にしておくと、自分を守る材料にもなります。
2つ目は、支援員さんを「観察のパートナー」にすること。日中の様子を一番知っているのは支援員さんです。「食事量が減ったら教えてください」と観察ポイントを具体的に共有するようにしてから、異変を拾える速さが変わりました。
3つ目は、外とつながること。他施設の看護師さんと話す機会を持ったことで、「自分の職場のきつさ」がどこまで普通で、どこからが職場固有の問題なのかが見えるようになりました(他施設の看護師と話して、自分の職場が見えてきた)。
「もう限界」と感じたら——施設ごとの環境差はかなり大きい
今の職場のきつさが「施設看護そのもののきつさ」なのか「その職場固有の問題」なのかは、一度切り分けてみてください。後者なら、あなたが消耗し続ける必要はありません。
もし転職を考えるなら、面接や見学の段階で「看護師は何名体制か」「夜間・休日のオンコールはあるか」「医療的な判断を相談できる相手はいるか」を必ず確認することをおすすめします。この3つで、働きやすさの大半が決まると言っても言い過ぎではないでしょう。
まとめ:きつさの「種類」を知った上で選べば、施設看護は悪くない
✅ 障害者施設の看護師は、体力的なきつさよりも判断の重さと孤独感がきつさの正体
✅ きついのは主に「一人での医療判断」「問診が成立しない中での観察」「職種間のすれ違い」「膨大な段取り業務」「スキルを伸ばしにくい不安」の5つ
✅ 夜勤なし・時間的ゆとり・年単位の関係性など、施設ならではの働きやすさも確実にある
✅ 病院勤務の経験がなくても、記録・支援員さんとの連携・外とのつながりを工夫すればやっていける(私は3年続いています)
✅ 環境差は施設ごとに大きい。「職場固有の問題」なら環境を変えるのも立派な選択肢
「きつい」という言葉の中身を知った上で選ぶのと、知らずに飛び込むのとでは、入職後の景色がまったく違います。この記事が、施設看護という働き方を検討するあなたの判断材料になれば嬉しいです。



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